本日、1歳次男と6歳長男がおたふくかぜの予防接種を受けてきました
今回、おたふくのワクチンを受けるにあたって医師から言われたのは、
- おたふく風邪にかかると500人にひとりは耳が聞こえなくなる(一過性ではなく一生)
- ワクチンは2回接種を推奨。1回接種で80%・2回接種で90%の確率で予防
- 二回目を接種する場合は就学前に(年長児)。
ということです。
500人に1人とは、衝撃的な数字です。
しかも、この難聴は一過性のものではなく、生涯にわたるものだということです。
しかし、以前調べたときには、こんなにも高い確率ではなかったように思ったので色々と調べてみました。
おたふく風邪の予防接種については、「任意」とされているため、接種の必要性を判断する情報自体があまり整理されていないように感じました。
接種を行うかどうかは保護者の判断ですが、検討のきっかけになればと思い、記事にしました。
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「2万人に1人」説
現在、国立感染症研究所では、おたふくかぜによる難聴に関して以下のように説明しています。
20,000例に1例程度に難聴を合併すると言われており、頻度は少ないが、永続的な障害となるので重要な合併症のひとつである」
「感染症情報」→「疾患名で探す」→「流行性耳下腺炎」でたどったページの「臨床症状」の項目に記載があります。
ちなみに、「流行性耳下腺炎」「ムンプス」とはおたふくかぜの別名です。
おたふくかぜによる難聴は、一般的に「ムンプス難聴」と呼ばれます。
ムンプス難聴が「2万人に1人」とされてきた根拠
では、国立感染症研究所は、何を根拠にムンプス難聴を「2万人に1人」としているのでしょうか。
まず、前提として、日本とは違い、世界的には、おたふくかぜはほぼ制圧された疾患だという事実があります。
おたふくかぜの患者自体が少ないため、おたふくかぜに罹患した人の何人が実際に難聴になるのかという調査は世界的には(国内でも)ほとんど行われてきませんでした。
また行われた場合でも母数が少ないという問題点がありました。
では、どうやって2万人に1人、1.5万人に1人といった数字をはじき出したかというと、「ムンプス患者数を地域の人口の半数」あるいは「地域の小学生総数の86%」とした推計値を用いてムンプス難聴と診断された患者数の比率を計算していたそうなのです。
まぁ、なんといい加減な・・・。
このあたりの話は、国立感染症研究所のサイト内で「小児科からみたムンプス難聴について」というタイトルで橋本裕美先生が発表されています。
参考文献等もそちらをご参照ください。
実際におたふくかぜ患者を調査した結果の難聴率
そして、上記橋本先生のグループが20歳以下の7,400人のおたふくかぜ患者を対象に実際に調査を行ったところ、7名のムンプス難聴者が確認されたということです。
この場合ムンプス難聴の確率は1,000人に1人ということになります。
更に、小児耳鼻咽喉科の診療に20年以上携わっている工藤典代先生は、「ムンプス難聴と聴覚補償」で、「ムンプス難聴は少なくとも一つの小学校に一人か二人ぐらいは存在するように思われる。」と述べています。
その上で、「耳鼻咽喉科医からの報告では1:184(石丸、1988)、1:225(木村、1991)、1:250(児玉、1995)、1:553(村井、1995)、1:294(青柳、1996)と、小児科の教科書とは発生率に 100倍近くの差が生じている。」とも続けています。
この場合は、ムンプス難聴率は184人に1人~553人に1人ということになります。
工藤先生の論文も、国立感染症研究所のサイト内で確認できます。
揺らぐ国立感染症研究所の見解
そして、橋本先生・工藤先生の論文が掲載された号の国立感染症研究所の「2013-08-23 – IASR 34(8), 2013【特集】流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 2013年7月現在」の「流行性耳下腺炎の予後と合併症」の項目では、以下のように記述しています。
ムンプス難聴は患者の0.1~1%にみられ、年間700~2,300人のムンプス難聴が日本で発生していると推定されている(本号9&10ページ)。
しかし、初めに説明したように、国立感染症研究所では、未だに「流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)」の項目では2万人に1人としていますから、公式にはそちらの数字を採用しているようです。
おわりに
おたふくかぜによる難聴の発症率に関しては、上記で示された数字をどう判断するのかということになります。
本当に0.1~1%だとすると、かなりの高確率です。
少なくとも、おたふくかぜの予防接種の検討をする価値はあると思います。
今回の記事が接種の有無の判断の一助になれば幸いです。
また、子供の通う園では、毎年、おたふくに複数名が感染します。
接種を予定している方は、できれば入所前、もしくは1歳になったあとすぐの接種をおすすめします。